ダンピング対策など8テーマを議論

 (社)建設産業専門団体近畿地区連合会(近畿建専連、北浦年一会長)と、近畿地方整備局幹部との第11回目の意見交換会が6月8日午後、大阪市内のホテルで行われました。
 冒頭、才賀清二郎建専連会長は「本年度の建設投資はピーク時より50%以上も下がる見通しだが、業者数は変わらずダンピングが続いている。このため、末端の労働者を教育・育成し、技能を伝承することも難しい。建設労働者の高齢化は確実に進んでおり、業界の将来が極めて不安である。日建連は昨年、優良技能者の年収を600万円以上するように初めて提言した。しかし、技能者に賃金を払うのは我々であり、払える環境をつくらないといけない。法定福利費などの経費を別枠にしてきちんとした積算を行い、本当の技術・技能を持つ企業に発注していただきたい。本日は中身の濃い意見交換会になることを期待している」とあいさつ。
 北浦会長は「ダンピングを止めるには、発注者がゼネコンに『職人を持っている業者に発注する』『良い職人を現場に寄こす』という2点の指導を徹底していただくしかない。職人の待遇は日に日に悪くなっており、早急な改革が求められている」と述べました。
 近畿地方整備局の上総周平局長は「入札時のダンピングが未だに横行し、末端へのしわ寄せが続いている状況を危ぐしている。経営審査のやり方も改善しているが、良い業者が生き残れる環境をつくるのが我々の役割だと思っている」とあいさつしました。

 続いて、次のそれぞれのテーマについて意見を交換しました。
     ◇
【ゼネコン指導について】
 《(社)全国建設室内工事業協会関西支部》

―現在工事現揚が少なく、業者間で仕事の取り合いとなっており、ゼネコンの厳しい指値で請け負わざるを得ない状況にある。そのしわ寄せが職人にいっており、このままでは将来職人がいなくなると危惧される。下請間で単価引き下げを競わせるようなゼネコンの対応を指導できないか。
(整備局)ダンピング対策として、直轄発注では低入札の重点調査や施工体制確認型の導入、特別重点調査などを実施している。また、発注者協議会などの場を通じてダンピング対策や総合評価の導入を管内の公共発注者に要請している。

【主任技術者配置要件の緩和について】
  《(社)全国建設室内工事業協会関西支部》

―専任の主任技術者の配置が現在、請負金額2500万円以上の工事において義務づけられているが、この金額を引き上げてほしい。
(整備局)主任技術者の配置は建設業法で定められており、政令の改正のためには具体的な根拠が必要となるが、この件については以前からも要望が強く、引き続き関係各課に伝えていく。

【公共工事の早期発注のお願い】
  《全国コンクリートカッターエ事業協同組合》

―景気の低迷、公共工事が削減される中、政府の公共工事の前倒し発注等でどうにか保てていた状況が、本年はすでに5月の半ばにさしかかろうとしているのに、公共工事の発注が行われていない。早期発注をお願いしたい。
(整備局)本年度も条件が整った案件から発注している。業種別にばらつきはあるかもしれないが、今後もできるだけ速やかに発注していきたい。

【下請代金支払の適正化について】
  《近畿建設躯体工業協同組合》

(イ)前払い金について
―公共工事を受注して元請業者が前払金を受領した場合には、建設業法第24条の3第2項に基づき、下請業者等に対して必要な費用を前払金として支払うよう配慮することが義務づけられている。しかしながら依然として元請業者は、当該前払金を自社の運転資金として流用するなどで、下請業者等に対しては前払金を支払わないケースが圧倒的に多いものと思われるので、改善するようご指導願いたい。なお、「建設業法令遵守ガイドライン」にあっては、前払金の取扱については全く記載されていない。これは配慮義務であるためだと推察されるが、支払わなかった場合は工事成績等に反映するなどの処置を執る事で、元請業者に支払いを促進するような動機つけを規制したらどうか。
(ロ)下請代金の支払い方法について
―工事代金の支払い方法は、少なくとも労務費相当分については現金で支払うことが義務付けられているが、最近は支払代金に占める手形の比率が徐々に高くなる傾向にあり、このため、労務費の支払いに支障を来す場合がある。また、毎月の出来高部分払いを請ける際には、保留金として一部の支払い(約10%)を留保されるケースが多くなってきたので、併せて改善するようご指導願いたい。
(整備局)下請代金の支払いについては、毎月の出来高に応じた支払いになっているケースが多いのではないか。労務費相当額は現金、手形サイトは120日以内にするよう指導している。
(ハ)下請業者の現場管理費の計上について
―現場管理費の積算で計上されている主に下請業者の経費である労務管理費及び法定福利費(下請事業主の負担となる雇用・健康・厚生年金等の各種保険)について、元請業者において十分な理解が足りないためか、契約内容にそれらの経費に十分に反映されないケースが多いので、ご指導願いたい。
(整備局)現場管理費のみならず、ダンピングによる下請けへのしわ寄せがないよう発注者として監視していきたい。

【登録基幹技能者の加点対象工事について】
  《近畿建設躯体工業協同組合》

―登録基幹技能者の加点対象を総合評価方式標準I型だけでなく全ての発注物件に拡大できないか。▽標準I型の工事規模は、どちらかといえば地場ゼネコン向さてはないか▽建専連会員の多くは中堅ゼネコン以上の協力会社であり、今回の方式を拡大してもらうことで参加できる▽今回の評価方式が拡大すれば、重層構造が減り直用化か増える▽技能者の待遇改善や地位の向上につながる。
(整備局)登録基幹技能者の加点は、技能者の意欲向上にもつながるため試行しているが、良質な技能者を養成する契機になるものと期待している。

【学校等公共施設の壁に漆喰使用を普及願いたい】
  《(社)日本左官業組合連合会》

―近年、学校などの耐震改修において既存のドロマイトプラスター等の壁が破壊され乾式系や塗料など学童の健康に不向きな建材で復旧されている。漆喰など左官の塗り壁には、低炭素化への寄与や抗菌性など様々な利点があることから、学校をはじめ病院や幼稚園などにも漆喰壁が採用されるよう、普及方策を検討されたい。
<漆喰使用の利点>
(イ)漆喰壁による低炭素化施工―漆喰(消石灰)硬化時に空気中のC02を吸収し吸着(同時に科学物質的不純物)させることからCO2削減に寄与する。試算=消石灰40Kgでの二酸化炭素吸収量24Kg(漆喰13万u施工で10万トンのC02を吸収)。
(ロ)漆喰壁の抗菌性能(ウィルスヘの抗菌性)
 ドロマイト入漆喰の抗菌率99.998%(鳥取大学実験)は、消毒性能を持つ石灰より高い抗菌率を持つ。ドロマイトは、新型インフルエンザ対応マスクにも採用されている。漆喰壁採用で病院では院内感染、学校・幼稚園などでは学級閉鎖を防ぐ効果が期待されている。
(整備局)漆喰は日本の風土に培われた重要な建築技術だと認識している。学校などへの適用を強いるわけにはいかないが、環境省でもモデル事業として実施している。

【商社・ブローカー等の介入について】
  《(社)全国鐵構工業会近畿支部》

―業界の経営環境は悪化の一途をたどっているのが実情である。需要が大幅に不足しているため、過当競争の発生は避けられない事態で、この収拾を図るのは業界団体の責務の範囲であるが、この過当競争に拍車をかけ、混乱を増幅するような憂慮すべき事態が発生している。それは、商社や鉄鋼特約店、ブローカーの鉄骨営業への介入であり、従来鉄骨営業に携わってきた大手商社の多くが営業活動から撤退し、地方の流通業者などが参画するようになり、これらの新興商社層の鉄骨製作に対する認識不足により十把一絡げの法外な価格の要求が横行している。鉄骨加工は、物件毎の注文生産であり、その中で、法的基準に適合した品質管理を実現するために、性能評価基準と同基準に基づいた鉄骨製作工場認定制度が存在すると理解している。認定も取得せず、工場すら持たない流通業者が鉄骨製作に介在することは、適正な品質管理を阻害する要因となり、耐震偽装と同種の問題発生すら危惧される。業界の社会的信頼を全うするためにも、適宜行政指導を願いたい。
(整備局)これは資材だけでなく、工事の施工にも関連する話であり、問題があると考えている。生産物の品質を確保するには良い材料を使わなければいけないのは当然であり、我々が商社やブローカーを指導する権限はないが、関係団体との意見交換の場などで指摘していきたい。

【雇用体制の確立】
  《(社)日本建設大工工事業協会》

 建設業は旧態依然の雇用形態が続いている。品質、安全、技能継承、人材確保のためにも、直用体制を図るべきと考える。業界の意識改善が必要であり、指導をお願いしたい。
(整備局)我々も同様な問題意識を持っており、次の整備局からの提案事項に関連して、ご意見をいただきたい。

     ◇

【近畿地方整備局からの提案議題「専門工事業者と技能者(職人)の在り方について」】
・本来施工業者である専門工事業者に施工を担当する技能者がいないというのは不自然ではないかと考えている。
・特に、ダンピングの影響により、技能者の労働環境が悪化しており、そのために施工の中核となる技能者の離職が増加している。その結果、ベテラン職人の長年培ってきた技術・技能が次の世代にうまく受け継いでいかれるのかどうかが懸念されており、技能者のレベル低下は、そのまま建設業のレベル低下につながり、建設生産物の品質の確保にも懸念が生じ、結果として、国民の安全・安心を脅かす要因ともなってくる。
・専門工事業者が技能者を直接雇用することの可否も含めて、今後の専門工事業の在り方について、正面から議論しなければならない時期に来ている。


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